■紹介文
小国町出身の坂本善三は、「グレーの画家」「東洋の寡黙」と評される抽象画家として知られている。故郷の風土や自然に根差した坂本善三の作品は、日本独特の抽象画であると世界でも高い評価を受けた。亡くなるまで熊本で制作を続け、熊本の美術界に大きな足跡を残した。阿蘇の懐に抱かれた小国町は、霧となり雪となるとその豊かな色彩の大自然はたちまちモノクロームの世界となる。これこそ坂本善三の世界であり、彼が世に送り出した品格のある作品の根っこの部分となっている。
昼は美術学校に通う文字通の苦学生、夜は新聞搬送の作業員であった善三がわずか22歳の時、当時日本の美術界に大きな足跡を残し、話題の中心にあった気鋭画家たちが発起人となり「坂本善三後援会」が結成。また、当時日本の最上層にいた人物達もまた発起人であり、深く目をかけてくれた信じがたいような話は事実である。天才的な才能と愛情豊で繊細な人柄は、善三に縁した多くの日本の大家たちが魅せられた。